恋愛禁止は法律違反?法律から見たアイドルが恋愛する権利について

記事の著者:Kanako

昨今、アイドルタレントの恋愛問題がニュースを賑わしています。さらにアイドルタレントの所属事務所が、マスコミに恋愛を暴露されたアイドルタレントを相手取り、規約違反による損害賠償請求訴訟を起こすまでに発展することも。

裁判で争われるほどにアイドルの自由が制限されることは正しいことなのでしょうか?現在の日本国憲法と専門家の意見を基に考察してみます。

判例も揺らいでいる

2015年1月の東京地裁のアイドルの恋愛に関する判決は、アイドルの所属事務所が起こした損害賠償請求について、「異性との交際は、幸福を追求する自由の一つであって、禁止は行き過ぎである」という理由で請求棄却というものでした。

すなわち、この判例ではアイドルの恋愛の自由を肯定しています。

一方、2015年9月の東京地裁のアイドルの恋愛についての判決は、「アイドルである以上、ファン獲得には交際禁止の規約は必要で、交際が発覚すればイメージが悪化するとした会社の訴えは合理的」とし、アイドルに損害賠償を命じました。

この場合はアイドルの恋愛の自由を否定しています。つまり、裁判所の判定も統一されているとは言えないのが現状です。

幸福を追求する自由とは

2015年1月の判決では、「幸福を追求する自由」の一つとしてアイドルの恋愛を認めたと解釈できます。

専門家の意見によると、日本国憲法・第十三条が「幸福を追求する自由」を定めた法律で、特別に権利が定められていない国民の権利を尊重するための包括的な定めであるとのことです。

憲法には明確に自由に恋愛する権利は定められていないため第十三条が受け皿になり、裁判所はアイドルの権利を尊重したということになります。

交際禁止の規約の尊重

アイドルが所属事務所と交わす契約書の中に男女交際を禁止するという規約が含まれており、それにアイドルになる人が合意していること。それが、2015年9月の判決でアイドルの所属事務所が勝訴した要因です。

この場合は、幸福を追求する自由の権利よりも、交際禁止の規約違反による損害からアイドルの所属事務所の営業利益を保護することのほうが勝ると判断されたことになります。

交際禁止の規約は権利を放棄させるもの

アイドルになるために交わす契約書の中に男女交際を禁止する規約が含まれていることは、契約を交わす段階で知った上で同意しているはずです。これは男女交際の自由が憲法に基づいた権利だったとしても、その権利を放棄することに他なりません。

専門家は、すでに不動産売買契約を結んでいる状態で、「財産を所持する自由」をたてに不動産の引き渡しを拒むことを認めたら経済は成立しなくなる、という例を挙げており、まさにその通りです。

アイドルは事務所が初期投資をして各種媒体に露出させ、人気を上昇させてチケットやグッズなどの売り上げを伸ばし、投資を回収するビジネスモデルです。それを権利を盾に壊されてしまったら、アイドル事務所の経営は破綻していまいます。

権利を放棄したら恋愛をする権利はなくなるのか

しかし、専門家はもうひとつ権利の放棄について、安楽死を望む病人が「生きる権利」を放棄すると同意していたとしても、それを奪うことは正当化されない、と説明しています。

本人の同意があるとしても人権を制限することはできないということは、アイドルと事務所の契約において非常に重要になってきます。つまりは恋愛の自由についても、契約として権利を放棄していても制限することに違法性はないのかが問題になります。

アイドルの恋愛の自由の主張は正当なのか

法的な問題性については未だ解決を見ていませんが、その主張が正当かどうかは状況によるものだと考えられます。

誰にも知られないように恋愛をして交際することは権利の主張の範囲内、恋愛して交際していることが他人に暴露されたら、契約の規約違反と権利の保護のせめぎ合い、自ら交際していることを暴露したら契約の規約違反という分類は可能です。

アイドルではない企業に勤務する会社員にもコンプライアンスというものが個人の責任として課せられます。2015年9月の判決では、所属プロダクションの監督不行き届きにも言及される部分がありました。

アイドルも会社に所属する個人だと考えれば、所属事務所はアイドルの恋愛についてもコンプライアンスとして管理し、発覚した場合も処理できるような、リスク管理の仕組み作りこそが大切なのではないでしょうか。